「 吸水する竹製マット」は、クラウドファンディング 「 Makuake」にて、2020年8月31日~10月10日公開で目標金額の199%(599,100円)を達成し、ご支援を頂きました。

 

 Makuakeサイト(https://www.makuake.com/project/bambria/)で、商品の詳しい特徴や開発経緯をご覧いただけますが、その記載内容をご紹介します。

 

 

今使用しているバスマットはどのような素材でしょうか?

 

繊維バスマットは吸水性が良く、肌触り(足裏感触)が良好なものが数多く販売され、多くの家庭で使用されています。合成繊維、天然繊維、複合されたものなど多種多様です。

繊維素材以外では珪藻土バスマットが、薄い板でありながら瞬時に水を吸うという驚きの性能で注目を浴び、現在では低価格で販売され、実際に使用されているご家庭も多くなっているようです。

 

 

今使用しているバスマットにご不満はないでしょうか?

 

 

 繊維バスマット吸水性は良好ではありますが、しかし一旦マットが濡れると足裏に水が戻る現象(濡れ戻り)が生じてしまいます。家族の人数が多いと最後にお風呂に入った人は、大量の水を吸った濡れたマットにのったとき不快に感じるのではないでしょうか?

 

 また、使用後の繊維バスマットは、衣服などと一緒に洗濯するには抵抗があり、毎日バスマット単独で洗濯するのが面倒だと感じることはないでしょうか?

 

 一方、珪藻土バスマットは、濡れた足をのせた瞬間に水が吸われ、マットの表面はサラリとしていて、濡れ戻りのない爽快感がありますが、ただ寒い冬の季節など珪藻土マットにのった瞬間、足裏にヒヤリとした冷たさ・硬さを感じることはないでしょうか?

 

 珪藻土マットは洗う必要がなく手間を省けるのですが、逆に洗うことが出来ないため不潔と感じる人もいるようで、また使用を重ねるとマット表面への汚れの付着によって吸水性が低下するため、サンドペーパーで表面を削る必要があります。削ったあとの表面には削りカスが残り、足裏にも付着してしまいます。更に割れやすいという問題もあるようです。

 

 珪藻土バスマットの登場で、繊維バスマットの使用上の問題点を一部解決できたのでしょうが、まだまだ十分に満足できるようなバスマットは現状存在しないのではないかと思います。

 

 

「もっとバスマットを快適に使用できないか?」

 

 

「繊維や珪藻土以外の素材はないのだろうか?」

 

 

このようなご要望にお応えして、「ニュートラル環境工房」より

 

     吸水する竹製マット Bambria

 

 

をご提案したいと思います。

 

 

 

商品の特徴について

 

 

商品の特徴は以下の通りです。

 

1)一番の特徴は、竹表面に入れた細かい切り目から水を吸収することができることです。バスマットとして使用すると足裏の水分を吸収することができ、洗面台マットやキッチンマットとして使用すると飛び散った水を吸収できます。

 

《水を滴下した時の吸水の様子》

 

 

※ 動画では、竹の切り目と切り目の間に水滴が残っていますが、足裏をマット上で滑らすように動かすと、水滴が切り目部に導かれて竹内部に吸収されます。

《洗面台マットとして使用した様子》

 

 

2)竹の湾曲した表面や節部そして細かい切り目は、足裏を刺激して気持ちの良い足裏感触があります。キッチンマットとして使用すると料理や洗い物で立ち続けていても、足裏が青竹踏み感覚で刺激され、また椅子に座って勉強中や読書中に足を載せていると、足裏に心地よい刺激があります。

3)マットの一番高い部分の高さは2cm程度ですが、マットの縁の段差で足を踏み外しての転倒やねんざを防ぐために、縁部の切り目のない竹の裏面を傾斜をつけて削ることで、段差を軽減して安全性に配慮しています。

 

 

4)塗料による着色やニス塗りなどは行わず、竹表面をバーナーの炎で焼いて自然な焼き色を付けているので、竹本来のぬくもりのある風合い・色合いとなっています。細部にもこだわって作り込んでいますので、玄関マットなどに使用すると素朴な和風の雰囲気を醸し出します。

 

 

玄関マットの場合、足が濡れた状態で玄関から入るときに、竹製マットの上で足裏を擦るように動かすと、足裏の水が切り目から竹内部に吸収されます。また、足裏が埃などで汚れた状態でも、切り目の凹凸で擦って足裏の埃・汚れを落とすことが可能です。

 

 

5)おもて面は竹材裏面は桐材を使用して天然材料にこだわり、環境にやさしい商品となっています。

6)竹表面の細かい切り目は吸水だけではなく足裏との滑りを防止する役目もあり、水で濡れても滑りにくく、またマットの裏面には床面との滑りを防止するために、コルク材の滑り止めを取り付けています。

 

 

プロジェクト詳細

 

竹の成長スピードは、50~60日で20m前後まで伸びピーク時には1日で1m以上伸びることがあるようです。

これだけの成長力を示す竹は、当然水分・養分を高く吸い上げることができる構造・組織を持っているということです。

この竹の吸水力をバスマットに活用できないか、ということが開発のスタートでした。

 

 

竹の内部構造について

 

竹の表面は硬い表皮で覆われていて、雨など外部からの水の侵入を防いでいます。

吸水性があるのは表皮の下部で、維管束という細い管(孔)が縦方向に多数走っている部分です。その維管束が地中からの水分・養分を吸い上げているのです。

 

《竹の断面拡大写真》

 

保水力についても竹は優秀で、今回の開発商品をバスマットとして使用しても、マットを通して床まで水がしたたることはほとんどありません。

 

竹表面に独自加工機切り目加工

 

竹内部の吸水性を利用するには、表皮層を水が通過する必要がありますが、今回の開発品では竹表面に細かい切り目を入れて、水を内部に導いています。

風呂上がりの足裏についた水分は、この細かい切り目を通して、竹の内部へ吸収され拡散していきます。この切れ目に水が入り込む現象は「毛細管現象」と言われます。

 

《竹の切り目の様子を拡大》

 

竹の切り目部を拡大すると、断面に数多くの維管束の孔があることが分かります。水が毛細管現象により切り目に入り込むと、この孔から竹内部に水が広がります。そして竹の表面には孔がない防水性の表皮があるので、竹内部の水が逆戻りして足裏を濡らすことはありません。つまり濡れ戻りが生じない構造になっています。

使用している竹は竹垣に使う竹材(建仁寺割竹)ですが、その竹の表面に細かい切り目を入れることは、そう簡単なことではありませんでした。ノコギリで切り目を入れることから始まり、数年を掛けてやっと現在の独自加工機に辿り着きました。

現在は丸ノコ刃を使用していますが、その過程では刃の種類最適な刃厚・切り目間隔などを検討して最適な条件を見つけ、最終的に効率よく安定して切り目を入れることができるようになりました。

 

《切り目加工機による加工の様子》

 

切り目入り割竹をマット状にするには?

 

切り目入り割竹を如何にしてマット状にするか、これも大きな問題でした。

割竹の幅は4cmほどであり、連結してマット状にする必要がありますが、最初はヒノキ材のスノコに載せました。スノコの上に割竹なので高さがあり、段差による踏み外しなど安全面で問題がありました。

そのあとプラスチックのジョイントマットを土台とすることを検討しました。かなり安価に手間を掛けずにマット状に出来たのですが、ちょうどその頃プラスチックごみによる海洋汚染問題が、マスコミなどで大きく取り上げられるようになりました。

ここで大きく方向性を変えることを決心しました。手間や費用が掛かったとしても環境問題を生じない天然材料にこだわった脱プラスチック商品の開発に進むことにしました。

土台材料としては木材を考え、防腐性が高いといわれるヒバ材をまず検討しましたが、かなりの重量となってしまいました。

マットの持ち運びを考えると軽量化も重要であり、そこで軽い材料である桐材を検討しました。桐材は強度的には弱く割れやすいのですが、それを補うために障子の骨組みのように格子状に組むことにしました。

これにより軽量で強度もあり、そして竹の裏側に格子による空間ができるので、濡れた竹を乾きやすくすることも出来ました。

また木材を炭化させると防腐性・防カビ性が向上することがあるようで、バーナーの炎で桐材表面を焼くことにしました。焼くことで桐材の木目がはっきり見えるようになり、見た目にも桐材の味わいが感じられました。

 

 

竹の色について

 

竹のもともとの色は濃い緑色「青竹」と呼ばれていますが、今回使用している割竹は、耐久性を上げるために「油抜き(晒)」という処理が行なわれていて、淡いベージュ色をしています。

油抜きを行なった竹は「白竹(または晒竹)」と呼ばれます。

 

 

「白竹」の色は、年数が経つと黄味が強くなってきて、雰囲気のある飴色になってきますが、その色を最初から出せないかと考えました。

「白竹」に塗料を塗って色を着けてみましたが、竹表面はつるつるしているので塗料が固着しにくく、簡単に剥がれてしまいます。また、塗料を塗った表面は天然の竹の肌触りが失われてしまいました。

試しに竹表面をバーナーの炎で焼いてみたのですが、色調整は熟練を要するのですが、年数が経った竹の自然な色がでました。竹は耐熱性が高いようで、バーナーの炎をしばらく当てていても燃え上がったり焦げたりしません。適度に炎を当てることで、飴色の濃度調整も可能です。そして竹の表面のツヤは変わらず、竹本来の肌触りも失われていません。ニスの塗布も行なっていないので、自然のままの竹の風合い・色合いとなっています。

 

《竹の色》

開発コンセプトについて

 

ニュートラル環境工房では、「プラスチック材料から天然材料への切替え」「天然材料の良さの再認識・再発見」をコンセプトとして、“新しいものづくり”を行なっていきたいと考えています。

現在、海洋汚染などプラスチックゴミ問題が深刻化し、地球上すべての生物の生存に影響を与えようとしていますが、その解決への一つの方向性として脱プラスチック商品のご提案を行なうことができないかと考えています。

 

 

 

天然材料「竹」は、吸水力以外にも柔軟性耐熱性など魅力的な性質が多くあります。また木材とは桁違いな成長力により数年で材料として使用できるので、材料資源としても有望であるといえます。

「竹」に注目して、今後も新しい商品開発を行なっていきたいと考えます。

 

 

ところが大きな問題があることが分かりました。

竹や木の天然材料を扱い技能を要する加工ができる人(職人)が本当に少なくなっていて、このままでは近い将来、竹や木を扱う職人さんがいなくなるのではないかという問題です。

私の亡き父は建具職人でしたが、今回の加工を支援して頂こうと建具店を探したのですが、多くの建具店が廃業していました。

そのような状況のなか、昔父とお付き合いのあった建具職人さんに繋がることができ、桐枠の製作協力をお願いしたところ、快くお受けいただけました。色々とご助言も頂け、本当に有り難く感謝しているところです。

さらに建具職人さんからご紹介頂いた竹材店さんで、割竹材料の寸法調整の加工を行なってもらえることになり、徐々に量産化も見えてきました。

私は父の後を継がずに会社員となったのですが、戦後の高度経済成長の中ですべてが効率化・自動化されて、職人さんが食べていけない状況が作り出されました。

私もそれを子供の時から痛烈に感じさせられたのですが、今になって木工でのもの作りをはじめてから、職人の技能のすばらしさもの作りのやりがいなどを感じることができ、そして父への思いも変化してきました。

今後、職人技の伝承についても、かかわって行けたらと考えています。